プロローグ 学乱の幕開け

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   しかし網があるわりに、南蛮風の門の外は森に囲まれていた。海とは程遠い、山奥の城のようであった。  信長は次に、壁に埋め込まれた小さな突起を見つける。 「これは……?」  押してみると、天井にある細長い硝子の飾りが光り、部屋を明るくする。今は昼のため分かり難いが、夜に点ければ昼のような明るさになるだろう。 「なるほど、灯りか」  もう一度押してみれば、明かりは消える。何度か試してみると、一瞬で点灯と消灯を繰り返した。 「これはどのような技術なのでしょう。上で奴隷が点けているにしても、早すぎます」 「ふん、元よりここは未知の屋敷よ。分からぬもので頭を悩ませるより、誰かを見つけて吐かせた方が早い」  まるで見た事のないもの、そして若返った体。ますます自分達が死んだのではないかと疑いが強まる。しかしそれなら、信長はともかく、光秀までこの場にいるのは不可解だ。信長は本能寺にて光秀に奇襲を掛けられ、そして対峙した。攻める側――光秀が脱出路を確保していない筈がない。その光秀までもが、死に至るとは考えにくかった。  
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