第十二章

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「お願いします…」 私は一礼した。 そして、構えた。 私が強くなるには実践経験が少なすぎる。 だから、吉田さんにお願いした。 『君がこないなら僕が行くよ。』 吉田さんは私に突っ込んできた。 カンッという音が響いた。 けれど、それは私の耳にしか聞こえないもの。 道場は私が声を出さなければ静かなまま。 そして、何度も打ち合った。 「ハァ、ハァ……」 『君の課題は圧倒的な体力のなさ。そして、相手とやる感覚のなさだよ。』 私の額から汗が流れる。 私はそれを拭い、また構え直した。 みんなを守る為にも…… やらなきゃ… 「まだまだぁ!」 私は地面を蹴り、突っ込んだ。 夜遅くに誰もいる筈がない道場で響く声。 私は毎日、この時間が辛くも楽しい時間だった。
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