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恋心って、どうやったら消えるんだっけ??
あの時に、ちゃんと失恋しておけば良かった。
や、失恋してたんだけど、……親しくなんて、ならなければ良かった。
* * *
「お疲れ様でした」
金曜日。
お店の手伝いに行かなくなって、丁度1ヶ月。
蓮さんは、その間、二度、来たらしい。
店長が毎回、御丁寧に教えて下さる。
奏多くんって、気を遣ってるんだか、どうなんだか解らない時があるのよね。
「立花さん、最近、ゆっくりだね?」
「そう?」
「いっつも、金曜日は凄い勢いで帰ってくからさ」
えぇ。
お陰様で、金曜日の夜を持て余してますけどね?
「……彼氏と別れちゃった、とか?」
自分で言っておいて、申し訳なさそうなカオ。
だったら、最初っから聞かなきゃいいと思うんだけど。
「違います」
「じゃあ、失恋?」
「あのねぇ?一ノ瀬くん。申し訳なさそうなカオする位なら、聞かないで?」
そもそも、私に興味も無いでしょうよ?
「あ、思ったよりは元気だね?」
「は?」
「怒る元気も無かったらどうしようかと思ってた」
…………。
「なるほど。一ノ瀬くんが、無駄にモテる理由が解った気がするわ」
「無駄って、ひどいなぁ」
「……別に元気だから、気にしないで。でも、ありがと」
モテるには理由がある。
コレは、確かにモテるわ。
まぁ、誰もがやっていい訳じゃないけどね?勿論。
「送ろうか?」
「大丈夫。一ノ瀬くんのファンに絡まれるの怖いし」
言った私に、笑顔だけ返す。
に、しても。
職場の同僚にまで気を遣わせてしまった。
思ったより、重症?
地下鉄から地上に出れば、すぐに店が視界に入る。
今日は、金曜日の夜で。
蓮さんは、来てるんだろうか?
なんて、金曜日ごとに思ってる時点でアウトなんだけどね?
本当、困っちゃうなぁ。
早く帰って、ご飯食べて寝ちゃおう。
もう、コンビニのおにぎりでいいや。
作る気力も無い。
「朱音、ちゃん?」
近所のコンビニで、おにぎりを選ぶ背後からの、声。
その声に、思わず肩が跳ねた。
振り向くのが怖くて、固まったまま、動けない。
「……朱音ちゃん?」
「っ、あ、」
由良さんに顔を覗きこまれて、どうしていいか解らず。
唇を、噛んだ。
「やっぱ、そうや」
「……お久し、振り、です」
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