Vol.07

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  半ば逃げ込んだトイレ。 鏡に映る自分のカオに、ため息一つ。 ホンマ、よぉオンナが釣れるカオやな。 こぉゆーんをモテる。言うんやろうか? ただ、この見てくれに寄ってくるだけやのに?? 夜中の街灯に寄ってくる蛾ぁみたいなモンやな。 「っ、」 「あ」 仕方なく戻ろうとトイレから出れば、先刻、一番、俺にまとわりついてたヤツが居て、 「あの、」 「……何?」 駆け寄ってくる。 「あの、私、」 あー。 この空気、知ってるわ。 勘弁してや。 「好きです。付き合って下さい」 やっぱ、なぁ。 会って、小一時間経たん内から、よぉ好きや言えるよな? 「……悪いけど。俺、今日は数合わせで来ただけなんだ。恋人も居るし」 「え?」 「ごめん」 言う俺に、泣きそうな表情をわざわざ作って、それから去っていく。 そこは、逆に笑顔の方がグッとクる気ぃするんやけど。まぁ、どっちにしろ演技やから、どうにもならんか。あの子は。 ……きっと、肉じゃがもめんつゆとか使うタイプやで?アレ。 「断り方、変えたの?」 不意に、耳元で甘ったるい声。 「っ、な、」 「ひっさしぶりじゃない?蓮」 「……彩、華」 慣れ親しんだ、甘ったるい香水。 「どうしたの?いつもの、彼氏居るから。は?」 「……職場の連中と来てる合コンでは使えないんだよ。ソレ」 まぁ、何度か美味しく頂かせて貰った、相手。 「へぇ。でも、本当、最近見なかったけど、どうしたの?」 「……別に」 いつも同じ店な訳やない。 やけど、馴染みのヤツの話は耳に届いたりもする。 「つまんなそうなカオしてるけど。好みのオンナは居なかった訳?今日」 「だったら?」 「久々に相手してあげよっか?」 「相手、ねぇ?」 面倒な相手ではない。 装ってるんか、ホンマにそうなんかは知らんけど。 相性も、悪くはない相手。 最近、清らかに生きてた。 まぁ、据え膳くわぬは男の恥。っちゅう諺もある訳やし? 「なぁに?私でも不満なんだ」 「そーゆー訳じゃないけど、」 絡まって来る腕。 密着する身体。 重ねられた唇。 ここまでされて断るんも、まぁ、相手に恥をかかす事にもなると思うしなぁ。 思って、その腰に腕を回した瞬間、 カタン。 と、小さな物音。 いつ、誰に見られてもおかしない場所。 せやけど、まさか、その誰かが、 「っ、朱音」 よりにもよって、朱音って!!  
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