Vol.07

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  彩華はえぇねん。 コイツは、きっと誰かしらからメールなり何なりで俺が居るのを聞いたんやろうから、居ても不思議やない。 せやけど、何で朱音がココに居てるん!? 今日、金曜やん? いつもなら、仕事やろ?? 二の句を継げれん内に、朱音は踵を返して、 「ちょ、朱音」 俺の声には、当然、振り向かん。 ちょぉ、待てや。 どこから聞いてた? どこから見てた?? 「蓮?」 「……、」 アカンやろ? 何もかも、全部、アカンヤツやん。 「っ、」 「ちょ、蓮?」 「離せや」 「っ、な、何?今の子、蓮の何よ?」 「えぇから離せ!!」 彩華の手を振り払って、店内を見渡す。 丁度、店から出て行く、その後ろ姿が見えた。 「芳崎?お前、どこ行って、」 「悪い。俺、帰る」 「は?」 適当な額を同僚に押し付けて、荷物を持って店を出る。 朱音の最寄駅は知ってる。 ここからなら、通る道も限られる。 今から追いかければ間に合う。 久し振りに全力で走った。 オンナを追いかけるなんて、初めてかもしらん。 「っ朱音!!」 何とか追いついて、その腕を掴んで、 「……何、ですか?」 せやけど、俺を見る朱音の眼は、ひどく冷たかった。 「っ、」 「離して下さい」 いつもくれてた笑顔も優しさも、そこには無い。 「朱音、」 何を、言えばいい? 何を言う為に、追いかけた?? 傷ついたカオをした。 その傷をつけたんは、俺で。 これで、何度目やねん?朱音を傷つけるん。 「うそつき」 ポツリ、零れた言葉。 「……、」 「何が本当なんですか?……それとも、何もかも、嘘ですか?」 ポロリ、零れた涙。 「朱音、」 「って言うか、何で追いかけて来たんですか?何を言う為に?」 解らん。 何を言いたかった?何を言える?? 「無かった事にしたクセに!ただの店員に、何を言うつもりなんですか!?」 俺に、何が出来る? 何の為に、朱音を追いかけた? 「心配しなくても、お店に来て頂いたお客様の注文はお受けいたしますよ?店員ですから。私」 言われた言葉に、朱音の腕を掴んでた手は力を失って。 朱音はそのまま、人込みに逃げ込んだ。 悪いんは、俺や。 それは解ってる。 嘘を吐いた。それを訂正しなかった。 朱音を傷つけたんも事実で。 やけど。 何でやろうな? 何で、俺、傷ついてるんやろ? あぁ。 アカンな。 泣きたい気分や。  
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