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「せやから、言うたやろ?刺されても知らんで?って」
家に帰る気にもならんくて、寄った隆也の家。
事の成り行きを話せば、一刀両断。容赦なしのソレ。
「にしても、最悪なバレ方やんな?ソレ」
「…………」
自業自得。
その言葉の意味を、痛いほどに実感した。
「刺された方が、マシやったかもな」
「……へぇ」
「何やねん?」
「や、別に」
ホンマ、刺された方がマシやん。こんなん。
「言うつもりやってん」
「ん?」
「嘘や。って、何度か、言おうとは思ってん」
あん時は、知らんヤツやった。
こんな風に話すとも思って無かった。
無かった事にして欲しい。
そう言った時も。
距離を縮める気ぃなんて、無かった。
「……シンドイ」
彼氏が居る。言うた時さえ見せんかった、拒絶の眼。
何やろ?もう、笑ってもくれなさそうやった。
話も、聞いてくれないんやろうなぁ。
まぁ、何話すんが正解かも解らんけど。
俺、追いかけて、何言うつもりやったんやろ。
「……蓮ちゃんは、何に一番ダメージ受けてるん?」
「あ?」
何、に??
「嘘がバレた事?それで、朱音ちゃんに嫌われたかもしらん事?」
「……、」
「それとも、もう、朱音ちゃんのご飯が食べられなくなるかもしらん事?」
「っ、」
あぁ。
せやな。
客と店員やから、店で注文は聞く。言うてたけど、来週の金曜は居てないかも、な。
「蓮?」
「解らん」
「ん?」
「……俺、何が一番シンドイんやろ?」
メシが食えんかもしらん事なんかな?
ソレは、嫌やな。
「蓮は、朱音ちゃんの事、どう思ってん?」
「……それも、解らん」
ソレも、嫌やけど。
「解らんけど、」
「うん?」
朱音のメシは好きや。
アレが食えんとか、ホンマ、シンドイねんけど、
「あんなカオさせたかった訳や、無いねん」
涙も、拒絶も、シンドイ。
笑顔を、この先見せてくれなくなるかもしらんのも、……シンドイ。
「ホンマ、刺された方がマシや」
「そーゆぅんを、好き。いうんや無いの?」
「知らん。解らん」
さんざん、傷つけて来た罰なんかな?
今になって、今迄傷つけて来た分が、全部、返って来てるんやろか?
ココロの傷なんて、つける薬も無いのに、な。
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