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「……っ、うっま」
言うた俺に、呆れた視線。
「何?」
「や。毎回毎回、よく、リアクション出来るなぁ。と思って」
「旨いで?」
メシ目当てと思われた無いから、メシは要らん。言うたのに、朱音は会う度作ってくれる。
ほんで、毎回毎回、怖い程に、俺好みの味やねんて。
「蓮って、好き嫌い多くなかったっけ」
「めっちゃ偏食やったからなぁ」
「何作っても完食してない?最近」
朱音は、あの日以来、敬語もサン付けもしない。
まぁ、呼び捨てろ言うたんは、俺やねんけど。
「朱音が作ると、食える」
「……ある意味、充分に偏食ね?ソレ」
「お陰で、外食出来ひんで。まずくてアカン」
「喜んでいいんだか、どうなんだか」
年下やけど長女気質な朱音に、年上の筈やのに弟気質の俺は、よぉ面倒みられてる。
隆也と一緒に居ってもそうやけど。
俺って、つくづく弟なんやなぁ。
「あ、奏多くんが余ったプリンくれたんだけど、食べる?」
「食う」
今迄、経験した事のないほどの、穏やかな愛情。
週末、店の仕事終わりに俺ん部屋に来るんが、最近の日常。
メシを作ってくれて、ちょっと二人でまったりするだけ。
家デート言うよりは、ホンマに面倒みられてるだけやけど。
「今年は、冷夏って本当かな?」
「新聞で、もう真夏日は無い。書いてあったで?」
「間違って出て来ちゃった蝉の短い人生が気になって仕様がないよね?」
そう言や、今日は鳴いてへんな。
昨日の朝は、煩かった気ぃすんねんけど。
「明日って、運動会やろ?小学生は」
「ねぇ?晴れればいいけど」
言って、窓の外を見上げる横顔。
ホンマ、キレーやな。
「な、に?」
思わず、伸びた手。
その頬を指で撫でて、そっと腕を掴んで引き寄せる。
「ホンマ、白いな?」
「焼けないんだもん」
親指で、唇をなぞって、そっと自分のソレを重ねる。
「好きやで」
「……会話の脈絡ゼロ」
会う度の、告白とキス。
今、どの位の信用度かは、サッパリ解らん。
「少しは信じる気になったん?」
「…………」
聞いたソレには、無言しか返って来ないしな。
「まだ、か」
「……蓮は」
「うん?」
俺の胸を押して、少し距離をとる。
見上げる朱音の表情は、何とも表現し難い表情。
「な、ん?」
俺、何かしたか?
アカン事した??
「何で、私に、何もしないの?」
…………、はい??
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