Vol.04

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  無かった事にしてえぇか? か。 まぁ、そうだよね?そうしたい気持ちは解る。 彼氏が居る時点で、私は恋愛対象外だし。 本当なら、店にだって来たくは無いんだろうってのも解る。 ただ、うちの店の味が好きなだけ。 だから、無かった事にしたい。 うん。 当然よ。ソレが普通。 私だって、そもそも、言おうと思って言った訳じゃないんだし、無かった事にして貰った方が有り難い……。 「……、っ」 蓮さんも帰って。 誰も来ない店内。 吹雪の、風の音だけが煩い中、 失恋して、初めて泣いた。 どこが。なんて言えないけど、好きだった。 彼氏が居ると言われても、失恋してると解っていても、そう簡単に好きは消えない。 誰も居ないから交わせた会話が、嬉しかった。 「……要らないってのと、同じじゃない」 無かった事にしたい。 ソレって、好きの返品じゃない。 場所も取らない、忘れてしまえばいいだけの「気持ち」は、受け取っても貰えなかった。 その場に座り込んで、溢れてくる涙がどんどんスカートに染みを作る。 CLOSEの看板を出したから、もう誰も入っては来ないし、涙を拭うと目が痛いから、そのままただ涙を零す。 泣き飽きたら、片付けて帰ろう。 ついでに明日は休もう。 明日も吹雪って天気予報でも言ってたし、10日後に改めて失恋した痛手を癒そう。 大丈夫。 大人だもん。 明日と明後日で失恋に浸って、後は気持ちを切り替えよう。 コレだってお給料貰ってる仕事なんだから、オトナとして、ちゃんと仕事として彼を迎えよう。 「……カレー、作らなきゃ」 今迄通り。 お客様と店員。 「大丈夫」 無かった事になっただけ。 その方が、私だって仕事がし易い。 私は告白をしなかった。そして、彼は告白なんて聞かなかった。 何てシンプル。 * * * 週の真ん中、水曜日。 明後日は金曜日。 うん。 そりゃ、そうよ。 カレンダーはいつだって、この順番。 ちゃんと、平静を装えるか、不安。 いや。 大丈夫よね? だって、お客様と店員に戻るだけなんだから、今迄、一度だって会話なんてしてなかったんだし。 ソレに戻る。って事でしょ? 先週は、たまたま吹雪でお客さんが居なかっただけだもん。 もう3月も終わる訳だし? また吹雪の金曜日が来る筈もないし。 今週は、彼氏さんも一緒かもだし。 「……、アカネ、ちゃん?」 ん?  
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