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死ぬ?
椅子に縛られた手首に、ぽたりと水滴が落ちた。背中を伝っていた水だ。何だこれは。
不意にぞっと背筋が冷えた。
寒い。
急に身体が冷えてきた。周囲の気温が急激に下がったような感覚だ。
背中の生暖かさが不気味に残る。
「さて、ここで問題です」
耳元で暖かい吐息と共に少女が囁いた。
「あなたの背中を伝うものはなぁに?」
背中を伝うものとは、この水の事だろうか。
体が次第に震え出す。寒い。寒い。寒い。寒い。
不意に口を縛る布が解かれる。
ようやく声が出せる。分からない事は多かったが、何よりも気になったそれを口にする。
「……何なんだお前は!」
どうして此処に居るのか。
どうやって連れて来られたのか。
どうしてこんな事をされているのか。
そんな事よりも、今、自分に何かしている少女の正体が気になった。
「分からないと怖いですか?」
くすくすと少女は笑った。
「残念。時間切れです。じゃあ、答え合わせ」
背中をぬちゃりと暖かい手が撫でた。
思いの外小さい手だ。
後ろから腕が回される。ひらひらとした袖が首筋に触れた。
目を塞ぐ布に、細い指が滑り込む。僅かに開いた隙間から、薄暗い明かりが入り込んだ。とはいえ見えるのは白い目隠しと、少女の白い指だけである。
白い指には赤いマニキュア。
……マニキュア?
爪に塗られていると思った赤は、もっと広く広がっていた。
マニキュアじゃない。指が赤に塗れている。
するりと目隠しが解かれて、代わりに少女の小さな掌が眼前を塞いだ。
「正解は……これ」
ぬちゃりと滑り気のある液体が目の下を撫でた。少女の中指に撫でられた感触だ。
少女の白い手に滴る赤い液体。べったりとこびり付いたそれは……
「……血?」
「見てから答えたって駄目ですよ」
ずるりと少女の人差し指が両目の上を撫でる。滴る程に染みついた赤い液体が目に垂れてきて、思わず目を閉じてしまう。
未だに自由のない両手。目に入りそうな液体を拭うことはできない。
赤い色を思い出す。
あれは血だ。
何処から出てきた?
背中に滴る液体が?
何で自分の背中から血が?
しょきん、と鉄が擦れる音がした。
この音は知っている。
鋏(ハサミ)だ。
「お前何して……」
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