第0話 「晒し者」

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 死ぬ?  椅子に縛られた手首に、ぽたりと水滴が落ちた。背中を伝っていた水だ。何だこれは。  不意にぞっと背筋が冷えた。  寒い。  急に身体が冷えてきた。周囲の気温が急激に下がったような感覚だ。  背中の生暖かさが不気味に残る。 「さて、ここで問題です」  耳元で暖かい吐息と共に少女が囁いた。   「あなたの背中を伝うものはなぁに?」  背中を伝うものとは、この水の事だろうか。  体が次第に震え出す。寒い。寒い。寒い。寒い。  不意に口を縛る布が解かれる。  ようやく声が出せる。分からない事は多かったが、何よりも気になったそれを口にする。 「……何なんだお前は!」  どうして此処に居るのか。  どうやって連れて来られたのか。  どうしてこんな事をされているのか。  そんな事よりも、今、自分に何かしている少女の正体が気になった。 「分からないと怖いですか?」  くすくすと少女は笑った。   「残念。時間切れです。じゃあ、答え合わせ」  背中をぬちゃりと暖かい手が撫でた。  思いの外小さい手だ。  後ろから腕が回される。ひらひらとした袖が首筋に触れた。  目を塞ぐ布に、細い指が滑り込む。僅かに開いた隙間から、薄暗い明かりが入り込んだ。とはいえ見えるのは白い目隠しと、少女の白い指だけである。  白い指には赤いマニキュア。  ……マニキュア?  爪に塗られていると思った赤は、もっと広く広がっていた。  マニキュアじゃない。指が赤に塗れている。  するりと目隠しが解かれて、代わりに少女の小さな掌が眼前を塞いだ。 「正解は……これ」  ぬちゃりと滑り気のある液体が目の下を撫でた。少女の中指に撫でられた感触だ。  少女の白い手に滴る赤い液体。べったりとこびり付いたそれは…… 「……血?」 「見てから答えたって駄目ですよ」  ずるりと少女の人差し指が両目の上を撫でる。滴る程に染みついた赤い液体が目に垂れてきて、思わず目を閉じてしまう。  未だに自由のない両手。目に入りそうな液体を拭うことはできない。  赤い色を思い出す。  あれは血だ。  何処から出てきた?  背中に滴る液体が?  何で自分の背中から血が?  しょきん、と鉄が擦れる音がした。  この音は知っている。  鋏(ハサミ)だ。 「お前何して……」
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