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『絶対絶命のピンチ』
お約束通りに『誰か』が颯爽と現れて助けに来る。
しかし、助かるはずなのに、『誰も助けに来ない場合』はどうなるのであろうか。ただの凶報だけが、その場に流れるのであろうか。
天上界で暇をしていた神様は、ふとそんな事を思いついた。もちろん、そのような事は神様の仕事では無い。
実験台となる人間には責任を取り、以後、天寿を全うするまでは最高の幸せをプレゼントする事にしよう。
とにかく一度、見てみたい。普段は人間界の事には一切干渉しない神様が、気まぐれに起こした行動。
全く迷惑な話だが、神様も天国経営の参考にしたいのだろう。
ターゲットとなる女は、まさにピンチ、窮地、絶体絶命の瞬間だった。
マンションの住宅火災に巻き込まれ、3階に取り残された。バルコニーから飛び降りようと試みるが、下は工事が先週終わったばかりのガチガチのアスファルト。
電灯に輝く、『40』と書かれたオレンジ色の速度制限の文字が、女の目にはっきりと映った。
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