『化石の街』

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『石壊菌』に侵されると、正確には“死んで”はいない。 非人道的な方法は取らないという名目で、殺しはしないが行動を抑制する。その為に『石壊菌』は作られた。 その実は大量破壊兵器だが、対外的にどうとでもなるように、人間は都合よく言い訳をする生き物である。 しかし、動かないのであれば死んでいるも同義だった。 昔の人間、いや、人間の考える事はいつも愚かしく、時に無鉄砲だ。有史以来、争いの火種は衰える事が決して無かった。 細胞の一つ一つが石になる奇病に対して、抗体すらまともに作る暇も、余裕も無く、世界は滅ぼしあったのだ。 地下研究所で抗体の研究をしていた男と数十名が、未完成ではあったが『それ』が気化したものを吸い込んでいた為に、辛くも災害を免れた。 そして、男はパニックに陥っていた他の研究員には何も告げずに、研究所を去った。地下階段を登る時に背中から聞こえてきたのは、悲鳴と、そして罵声と。 男の予感は、当たったのだ。 この小屋には直ぐにやってきた。そして、3ヶ月後に地下研究所へ戻った。 肉の腐った、酷い異臭だったので、研究所入り口にあったB-7マスクを直ぐに装着した。どんな有毒ガスが発生していても、自動的に清浄な空気をマスク内に循環させる新型だ。
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