プロローグ

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「そうそう!今ね!たくみんの志望動機について話してたのさ!」 「おお、そうなんだー」 なんとも不自然に。それでも凛はちゃんと乗ってくれた。 「それで?どんな動機なの?」 「それではたくみんお願いします!」 「司会かお前は…まあいい、その…好きな子もこのゼミを受けるからだ。あとこいつもいるし」 「ヒューヒュー!べ、別に嫌な気分とかじゃないんだからね!」 「お前冷やかしながら照れるとか器用だな」 あははは、と凛は笑う。口角が綺麗に上がっていてとてもチャーミングだ。そんな彼女を見て光輝は達成感に浸っていた…拓海のツッコミで笑ってくれた、よくやった俺…と。 「でも奇遇だなあ、私もだよー」 「な、なんだっt」 ドアが空いて、中から一人男子が出てきた後、次の人どうぞー、という教授の声。いいところなのに!と憤慨しつつ、気を引き締めた光輝は失礼しますと言って研究室へと入っていった。 「あはは、行っちゃったね」 「そうだな…」 そこでようやく、彼女は研究室の前に並んでいる椅子に腰掛けた。 「ちょっと来るの早かったかなあー、あんまり待ち時間長いとよけい緊張しちゃうよね」 「確かに…さっきまでは食堂に?」 「うん、そう。でも落ち着かなくて…もうここでいいやって」 食堂は、ちょうどこの研究室の3階分真下にある。それなら拓海のから見て左に少し歩いた先にある階段もしくはエレベーターから来るのが一番手っ取り早い。 しかし、凛はさっき拓海の右手…光輝の座っていたほうからやって来た。もちろんそちらにも階段はあるが、ここから階段までは相当な距離がある。まさか… 「ああ、さっきの話だけど…」 悪い考えを振り払うため、拓海は隣に座る凛と話すことにした。 「なあに?」 「私も、って言ったじゃん?」 「うん、だって本当だもん!」 「……そっか」 拓海は先刻、このゼミの志望動機について好きな人がいるから、と光輝がいるから、の二つを挙げた。 その二つについて、同意したのか?喉元まで出かかった質問を、彼は押し込んだ。 「がんばれよ」 「うん!ありがとう!」 聞けなかった。聞かなかった。 聴きたくなかった。
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