おまけ―卒業―

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 「ご両親は分かってるよ。  入学金が返って来ない事も。  ちゃんと君と話し合って選んだ所だったでしょ?  今はそんな事気にしないで。  大丈夫。受かるよ。」  大学はどうしても都内に行きたかった。  そーまが活動の拠点にしているライブハウスも、レコーディングスタジオもレコード会社もみんな都内にある。  そーまのマンションまで帰れない時に泊めてもらうコータさんのアパートも都内。  大学生になって、そーまとちゃんと付き合えるようになれたら、忙しいそーまの空いている時間を有効活用するんだ。わざわざ、今までみたいに疲れているのに会いに来てもらわなくても済むように。  それを考えたら、私の選択は私立文系一択だった。  理科系が壊滅的に偏差値が低かったのもあるけど。  2年の初めに進路を伝えた結果は予想以上に厳しかった。  そーまには全部見透かされてしまうし、お母さんは都内のお嬢様女子大をメチャクチャ勧めるし……。  どう考えても、お嬢様女子大に通う自分が思い浮かべられなくて、母娘関係はギスギスした状態に陥った。  でも、今までの私と違ったのは、そこからなし崩し的にお母さんの言う通りにせず、必死にお父さんとお母さんを説得したことだ。  お父さんが「自分の好きなところを受けなさい」と後押ししてくれた事もあって、なんと、お母さんも折れてくれた。  はっきり言って、その時の自分の偏差値じゃ合格圏には程遠い大学だったが、希望の大学を目指す事を認めてもらえた。もらえたんだ。  そーまも、『国立では家から通える、手の届く大学に希望学部が無い』という私の主張にため息交じりだったけど、折れた。  自分に自信を持てるようになりたい。  自分で頑張ったと胸を張れるようになりたい。  大学に受かれば、晴れて、そーまと付き合える。  私のモチベーションは十分。  そーまの家庭教師に加えて、夏休みには予備校にも通わせてもらって頑張った。  本当に頑張ったんだ。  そーまが忙しい合間を縫って、一時間でもいいよねって言って来てくれて、問題集の間違った所や分からない所を教えてくれるのだから当然かも知れない……  それに、合格点が取れたら、ご褒美がもらえた……。  お母さんの見て無い隙を突いて……。
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