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「ゆーかちゃん。
ゆーかちゃんのクラスはこれからどこかで集まるの?」
「カラオケ行くとか言ってるけどさ。
ねね、そーちゃん来てんの?」
「え?」なんでゆーかちゃんには分かっちゃうの?
「あ、来てるんだ!
もう、ゆいちゃん、ちょろ過ぎだよ。全部顔に出ちゃうんだから。
ちょっとさ、久しぶりにあのドS先生の困る顔を見てやろうかなー
……なんて……」
ドS……
あ、まあ、その通りなんだけどね?
「あ、じゃあこれから一緒に行こうよ。」
「え?ホ、ホント?
あ、あじゃあ、あいさつだけね!
二人の邪魔したらそーちゃんに蹴っ飛ばされちゃうから」
ゆーかちゃんがほんのり頬を染めている。
そーまが学校を去る直前になって、彼女が“そーちゃん”を好きだった事に気付いた私は相当な間抜けだ。
そもそも最初から、“そーちゃん”と呼んではからかっていたのだから、もうそこから始まっていたと気付いてもおかしくなかったのに。
何があっても、私の味方になってくれたゆーかちゃん……。
私に出来る事は、相変わらず何も気づかない鈍感な私でいる事だけだ。
彼女の気持ちを思って切なくなってるなんて、心の中で何度も「ごめん、でも、ありがとう」と謝ったり感謝したりしてることなんて、微塵も感じさせないように。
ちょっと恥ずかしそうにした、女の子のゆーかちゃんと、そんな彼女にマリア様のような微笑みを浮かべるまりちゃんと、そーまの待つ裏門へと向かった。
校内にはまだ、帰れないでいる卒業生の姿がちらほらと見受けられる。
廊下の窓から綻び始めた桜と、その下で写真を撮る彼らに見惚れていたら、「あー」とゆーかちゃんが大きく伸びをした。
「きっと、そーちゃん、首を長くしてこの日を待ってたよね~」
「や、わ、私は待ってたけど。
せ、先生は、色々忙しくて……。ほら、アルバム出したり、ツアーに出たりして……」
「その、忙しい合間を縫って家庭教師、してくれたんでしょ?」
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