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「さて、夏休み明けには文化祭が待ち構えている訳ですが……」
6月に入って最初の部活の日。
高原部長の声が頭の上を素通りして行く。
湿気を含んだ風が白いカーテンを揺らす。
開け放った窓から聞こえて来るのはどこかの運動部の「ファイトオー!」と言う掛け声。
グラウンドの土を蹴る音。
さまざまな掛け声にのせて、
音楽室の方からも金管や木管楽器のプアーと言う音が重なって響いて来る。
眠い。
寝たの明け方だっけ。
読みだすと止まらなくてなー。
主のいない兄の部屋の本棚を物色していてそのまま読みだしたのが運のつき。
大型古書店が近所で開店した時まとめ買いした、と言っていた何年か前人気のミステリー。
天才的な頭脳で事件を解決する準教授と、とっても可愛いくて優秀な女子学生のアカデミックな会話に惹きこまれる。
カッコイイんだよねー。
読み終わるのはもったいない、のに先が知りたくてやめられない。
私ってしょうもないなー。
「……ちゃん。聞いてる?
ゆいちゃん!」
「は、はい!」
「今の話、わかった?」
「え?へへへ」
笑ってごまかしちゃえーって…無理か…。
みんなの冷たい視線が刺さる刺さる。
「あの、もう一度お願い……し…ます。」
ごめんなさーい。
机におでこを擦りつけて陳謝する私に。
「前科3犯。もう後ないからね。」
冷たく言い放つさやか先輩。
こ怖い…。いや3犯って私、ひどっ。
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