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例年、文化祭に合わせて発行する部誌を、今年は漫研とコラボして表紙や挿絵を描いて貰うことになったらしい。
「だから、これから皆で漫研に顔合わせに行くの。
それで、各々自分の作品を担当してくれる相手を決められたら決めちゃおう。ですって。」
「へー、コラボねー。」
廊下を移動中、隣を歩きながら説明してくれる日本人形みたいな上品な横顔につい見惚れてしまう。
漸く衣替えになって、ここの所の暑さに辟易していたみんなが一斉に白いシャツやブラウスの夏服になったと言うのに、彼女はまだ猶予期間だからと濃紺の上着をしっかり着込んでタイもしている。
今日みたいな日はちょっと動くと汗が滲んできそうなもんなのに涼しげな顔を崩さない。
木暮葉子、ヨーコちゃんはいかにも純文学しか読みませんみたいな顔をしてその実ミステリー好きだった。
「ねえ、ヨーコちゃん。
何書くか決まってる?」
「ゆいちゃんは?」
「私は全然だよ。内緒?」
「そうじゃないけど、迷ってて。コラボ面倒だよね。
自分のイメージと合ってればいいけどさ。」
そうなんだよね。
せっかく高原部長が企画してくれたのに、文句言っちゃ悪いんだけど。
漫研部員だって、自分の漫画も描かなきゃだし、大変だよ?
「漫研、よくOKしたよね。」
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