9、尋

22/25
1712人が本棚に入れています
本棚に追加
/205ページ
「郁人さんは教えてくれたんだ! 僕は今まで生きてなんかいなかったことを。  僕が生きるためには、死を知らなきゃならないんだ。死んだら、それまで生きてたってことが分かるだろ? 死を見ることで、生を実感するんだ。  すごいんだよ、郁人さんはすごいんだ、郁人さんがいなければ、僕はまた死ななければならない。そのくらいならいっそ……」  ふいに、後方のドアが開いた。 「うおっ!?」  体勢を崩した拍子に、宇佐美が腕の中から逃げ出した。  宇佐美が入り込んだのはバラの香りがする部屋。  白いドアの向こうには白いカーペットに白いカーテン、白い化粧台に白いベッド……×印の付いた部屋とは対照的な、一切の汚れを許さないような真っ白な部屋だった。  そこには、ベッドの上に座っている亜美と、亜美に抱かれた。 「由羽!!」
/205ページ

最初のコメントを投稿しよう!