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宇佐美の額や鼻の頭には汗の粒が浮かんでいる。
今、頬に一粒汗が流れた。
大きく開けられていた口から歯が見えなくなる。
宇佐美の肩が、小刻みに震え始める。
「わかったふうに言うな……!
僕は、殺さなくちゃいけないんだよ。
殺さなきゃ、郁人さんに従わなくちゃ。だって郁人さんは僕で僕は郁人さんなんだ、郁人さんが消えたら僕も消える、だから……!」
「お前はお前だろう、何をワケの分からないことを」
「もういいよ」
それまで黙っていた亜美が、宇佐美のシャツの裾を掴んだ。
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