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「いいって……」
「いいの」
大きな目を真っ赤にして、亜美は宇佐美を見上げている。
宇佐美の腕から力が抜けるのを、僕は見逃さなかった。
「由羽、こっちに来い」
僕が手招きすると、由羽は宇佐美からするりと抜けだして僕の脚にしがみついた。
宇佐美が自分に何をしようとしたのかは分からなくても、宇佐美と亜美、そして僕のただならぬ雰囲気は察知したようだ。
由羽は無言で、僕の脚に顔を埋めた。
由羽のさらさらした髪を撫でて、僕は「大丈夫だから」と言った。
「……大滝君、由羽ちゃん、ごめんなさい」
亜美は座ったまま、潤んだ瞳で僕を真っ直ぐ見つめていた。
呆然としている宇佐美と亜美を部屋に残し、僕は由羽の手を引いて亜美の家から出た。
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