ダウト⑤

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 だけどね、お母さん。  お父さん。  品行方正な娘と、一見真面目で問題のない息子と、温かな家庭ごっこをしていたあなたたちは、結局、僕を見ることをやめたのです。  僕がスズメの死骸を宝物にしたのはいつだったか、あなたがたは知っていますか?  僕が、友達の家の金魚を少しずつ盗み出し、違う家のネコにあげていたことを知っていますか?  そのネコを初めて殴った日を知っていますか?  赤い血に興奮し、下腹部が破裂しそうになる僕のことを、あなたがたは知っていますか?  知らないでしょう。  あなたがたは、衣食住を与えていれば従順に育つと思っていた。  世界はあなたがたを正しいと認めるだろう。  だが、僕はあなたがたを何とも思っていない。
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