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「口唇、尖らせんな。
咬みついてやろうかと思っても、
カメラ付いてるからな、ここ」
「……何考えてんの」
「女が口唇尖らせてたら、誘ってるように見える」
「……バカじゃないの。別に今は誘ってなんかないよ」
言ってから、自分の迂闊な発言にハッとする。
「“今は”……ってことは、あるんだろ? 誘ったこと」
はん、と真田は喉の奥で低く笑った。
ちょうど目の高さにある喉仏がひくり、と動いたのがいたたまれなくて、慌てて目をそらす。
「なんなの、真田……最近、そんな話ばっかり」
「お前見てるとやりたくなるからしょーがねーんだよ」
「……!?」
チン、と音が響いてドアが開いた。
真田はその隙間を滑り抜けるようにさっさと出て行ってしまう。
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