第7話

20/39
前へ
/39ページ
次へ
   いつもこうして襟の詰まったコートだから、真冬のオシャレには向いてない。  女子力の高さと健康、天秤にかけるべくもない。  マフラーは肩が重くなる気がして、苦手だし。  リップが襟の内側につかないように、軽く口唇を噛みながら歩いた。  会社ビルから吐き出されてきた人並みは何となく駅を目指しているけど、ぱらぱらと外れていく人もいたりして、どこに行くんだろうなんて思ったりした。  あまり覚えのない人達だけど、これから一緒に仕事をする人達だったりするのかも知れない。  心の中で「お疲れ様でした」とささやいて、真田の指定した四つ角への少し薄暗い道に、あたしも歩みを進めた。 .
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

570人が本棚に入れています
本棚に追加