第三話~繋がれる命~

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 あいつは間違いなく戦士だよ。 「戦士だから何でもできる、なんてことはないけどさ。同じような人間だからこそ信じられるってこともある」  その時、階下で扉が開き、ドタバタと誰かが駆け込んでくる足音がした。アクアやペリドットなどが騒がしく悲鳴をあげている。ただしそれは恐怖や不快に依るものではなく喜びを表す歓声のようだった。  ハッとして目を見開くトパズに微笑みを浮かべたルビアが頷く。 「マリンが話してから、だいたい二時間くらいか。大事な義妹が義兄のためにひとっ走りしてきたんだ、労いの言葉でもかけに行ってやれ」  鼻がツンとしてこみ上げてくる何かを飲み込み、首を大きく縦に振って廊下に飛び出した。それを見送りルビアは体をベッドに横たえる。  義妹の前だったために元気に振る舞っていたが、流石に限界だった。堪えていた落ちてくるまぶたをそっと下ろし、もう一度まどろみの中へ身を委ねた。  短時間で義妹が隣町へ行き、帰ってきた手法がどんなものなのかと疑問に思いながら。  * * *  階下の物音を聞いてトパズが部屋を出て、それから大騒ぎになった。絞れば桶がいっぱいになりそうなほどに長い黒髪に雨を吸わせた、ずぶ濡れのダイチが血液を他者に移す道具を握りしめて玄関で倒れており、それをアクアとマリンが二人がかりで抱えて風呂場へと連れて行き、ペリドットは道具を預かり医者とサフィの二人とともにヒスイの眠る部屋へ向かった。他のシオンの剣の仲間達や村人達が押し寄せ不安そうにしている中でトパズは医者の指示を受けてダイチを風呂に入れて温めてやり、水気を取るとダイチの部屋のベッドに寝かせた。  サフィがヒスイに提供した血液の量は決して少なくはなく、彼女も貧血にはなったが命に別状はなし。拒否反応も起こらずヒスイも頬にやや赤みを戻して一山を越えた。すぐにとはいかないが彼も元通りの生活が送れるようになると医者は保証し、長い間冷たい雨風にさらされ続けたダイチは高熱を出したが、ルビアと同様数日で治るらしい。  家族皆が床(とこ)に伏せっている間、トパズは村の人達に手伝ってもらいながら家事をこなし、ダイチが隣町までの道のりをどうやって短時間で往復できたのかということも確認できないまま二日が過ぎ去った。
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