第三話~繋がれる命~

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 トパズの驚声に肩を震わせ、短い悲鳴を上げながら台所で鼻歌を歌っていたが振り返った。勢いよく振り返ったせいでその手に握られた鍋が振り回され、その中でじっくりと焼かれていた黄色の塊が宙を舞う。 「わわわっ!」  可愛らしい慌て声を出しながら、しかしその挙動は機敏で、飛来してくる塊を呆然と見つめているトパズの前に割り込み放物線上に鍋を設置、塊の進行方向にわずかに動かすことによって衝撃を逃がすとそれは元通り鍋に戻った。安堵のため息をついた彼女は台所へ戻り、鍋をもう一度火にかけながら振り返る。 「おはようございます、トパズさん」  義妹が、ダイチが微笑み挨拶をした。 「え……」 「?」  小首を愛らしく傾げるダイチに指を向け、阿呆のように口を開きながら尋ねた。 「ダイチ……体調はもういいの? それに料理できたの? 今作ってるそれ何?」  知りたいことがたくさん湧き上がり、順序も文法も何もなくバラバラに口から出てくる。そんな義姉を微笑ましげに見つめ、どこか慈愛めいた笑みを浮かべながらダイチは用意してあった皿に黄色い塊をそっと載せた。よくよく見るとすでに他の食事も用意していたようで、サラダやベーコンも盛りつけられている。  皿の上に乗せられた黄色い物体を包丁で切り分けるその様は随分と手馴れており、皿を傷つけることなくそれをいくつかに分けてしまう。  三人分の食事をトレイに載せてテーブルに運び、トパズの横を通り過ぎる時に囁く。 「はい。トパズさんのおかげでもう元気です。ご心配おかけしました」  悪戯っぽく、しかし心からの感謝を込めた言葉。それを残してカチャカチャと食事の準備を始める。 「……」  肩が震える。喉から何かがこみ上げてくる。まったくもって生意気な義妹である。義姉がどれだけ心配をしていたと思っているのか。二日も熱を出して寝込んでいた義妹の身を案じ、心を痛めていたと思っているのか。  人がどれだけ心配していたと思っているのだろうか、この小娘は。  それをただ、「ご心配おかけしました」の一言で済ませようというのか。  そんなことは許されない。 「わわっ、トパズさん?」  突然後ろから抱きついてきた義姉にダイチは大いに戸惑った声を出す。
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