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「謝るのは、違うよね。ダイチに言われて、ようやく気付いたよ」
「ヒスイさん……」
「僕、今まで謝りすぎてたのかもしれないね。本当、ダイチはすごいなあ。僕達の中に不足していた何かを、どんどん埋めていってくれる」
「……そんな大したものじゃないです」
「ううん、大したものだよ」
そう言って、ヒスイは力の入らない腕を必死に持ち上げ、震えを抑えきれないままでダイチの頭に手を置いた。
「ありがとう、ダイチ。感謝してもし足りないね」
「……」
「でも、さっきのには驚いたなあ。ダイチって、興奮すると性格変わるんだね」
うぐっ、と気まずそうに声を漏らす義妹。
「ダイチの新しい一面が見られて、嬉しかったかな」
「ヒスイさん、嫌いです」
不満そうなふくれっ面で顔を背けるダイチをおかしそうに見つめ、ヒスイは眉を八の字にした。
「あらら、嫌われちゃったか」
「……でも、謝るのは間違いだって、素直に認めたところは嫌いじゃないです」
「え?」
「い、いいから! ほら、ヒスイさんが早く元気になってくれないと、ヒスイさんのために無理をしてくれたサフィさんにも悪いですよ」
「……そうだね。ダイチが道具を借りてきてくれなければ死んでいたけど、サフィさんが血を分けてくれたおかげでもあるんだよね」
しみじみと呟き、自分の体を見下ろす。そう、今ヒスイが生きているのはサフィが血を分けてくれたからという事実は大きな要因だ。彼の体内を流れているサフィの血が彼を生かしてくれた。
今更ながらだけど、とヒスイは思う。いろんな人がいろんな手を尽くしてくれたから、今僕は生きているんだ、と。
話を聞いただけだが、獣に襲われそうだったルビアが森から連れ出し、医者や村の皆が傷の処置や看護をして、ダイチが血液を他者に分け与える道具を隣町まで借りに行き、サフィが自身の命の危機を顧みず血液を分けた。どれかひとつでも不足していれば、今頃ヒスイはこの世から去っていたことだろう。
「……」
大勢の人物に感謝の念を抱きながら、自分の体を大事そうに見つめるヒスイを見ていたダイチは、不意に笑みを浮かべた。
ただし、優しい笑みではなく、悪戯心満載の。
そっとヒスイの耳元に口を寄せ、
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