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「体の中を流れているサフィさんの血は、気持ちいいんですか?」
「へっ!?」
素っ頓狂な声を上げて素早くダイチを見る。ニマニマとどこまでもいやらしく笑う義妹が目を細めて続けた。
「だぁ~い好きなサフィさんとは、もうお風呂はご一緒したんですか?」
「あ、ああ……」
「おやおや~? 耳まで真っ赤になっちゃってますよ? まだでしたか? それとも、サフィさんの裸体を想像しちゃってます?」
サフィの体。湯の中に沈んだ彼女の裸。服の上からでもわかるほど豊かな胸に、柔らかそうな腰。白くて綺麗な、滑らかで美しい肌。湯気に囲まれ、水気を吸い込んで重く垂れた青い髪から滴る滴が肩に落ち、緩やかなカーブを描いて胸元に吸い込まれる――
「かかかか考えてないよ!」
ハッとして否定をするが自分でもわかるくらいに声が震え、顔に熱を感じる。ダイチの笑みがより一層濃くなり――暗い笑みが深くなったとも言う――肩が震える。恥ずかしくてダイチの顔が見られず俯いてしまう。一回り以上年下の女の子にからかわれるとは大人として情けない限りだが、元々純心な彼には刺激が強すぎる意地悪だった。
「――だいぶ元気にはなったみたいですね」
「え……?」
ダイチの声のトーンの変化に思わず視線を戻してしまう。見ればダイチの黒い瞳はついさっきまでの意地悪な心を見せず、優しさを湛えた笑みを見せている。義兄達が彼やルビアに見せていた、身内に対する優しさを体現した目だった。
そこで気がつく。
「もしかして……今のは僕を励まそうとしてくれてたのかい?」
「いいえ? この間、私をお風呂に無理矢理入れてくれた仕返しです」
しれっと言う義妹にはぐうの音も出なかった。しかし、彼女が本気で心配してくれていることがわからないほど愚かではないつもりである。
「ほら、早く元気になってくれないとヒスイさんの気持ち、サフィさんにわたしが言っちゃいますよ」
「え、ええっ?」
「嫌ならたくさん食べて、早く元気になってください♪」
「……はーい」
口元に運ばれる温かいスープを、ヒスイはありがたく啜るのだった。
その後、いつまでも階下でバトルをしている二人の頭をダイチがトレイの角で叩き、黙らせたのはまた別の話。
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