第四話~激突する刃~

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「いいから、今回は義姉のわたしに任せておきなさい。今回、わたしだけあまり役に立っていなかったしね」 「そんなこと……」  即座に否定をしようとするダイチに首を振る。少しも話を聞かずにガツガツと食事を続ける義姉に白い目を向けながら、 「気持ちは嬉しいけど、事実よ。それに家族なんだから、わたしだって何かしてあげたいって気持ちくらいあるわ。ちょっとくらい汲んでくれたっていいじゃない?」 「……わかりました」 「みんな、ありがとう」  感謝の言葉を述べた人物に、フォークを手に取り食事を再開しようとしていたトパズと、眉を八の字にしたダイチと、未だにおかわりを要求するべくダイチに空になった皿を突き出そうとしていたルビアの視線が集中した。  椅子に座り、弱々しく微笑むのは彼女達の義兄。 「僕は本当に幸せ者だよ。こんなにも優しい義妹達に恵まれて……」  椅子から立ち、涙ぐむ彼の顔をダイチがそっと拭く。もはや気の利いた婿ならぬ嫁である。  ダイチに感謝の意を示して彼女を椅子に戻るよう促すヒスイを見て、ずっと食事を続けていたルビアがようやく言葉を発する。 「最近、ヒスイ変わったよな」 「うん?」  ゆっくりとダイチの料理を咀嚼するヒスイは首を傾げた。まだ傷は完全には塞がってはいないが、無理な動きをしなければ普段通りの食事をしてもよし、と医者から許可が下りこうして一緒に食事をしているのである。やはり食事はみんなと食べたいというヒスイの要望もあり、昨日から食事は四人で摂ることになった。 「謝らなくなったぞ? この間までならこういってたと思うんだよな。『ごめんね、僕のせいで迷惑をかけて』ってさ」 「言われてみればそうね」  あまり似ていない声真似にヒスイが苦笑していると、義姉の意見にトパズが賛成した。 「怪我をしてから、あまり謝らなくなった気がするわ。あ、もちろん謝ってほしいってわけじゃないわよ? 謝られるよりも今のほうがずっといいからね?」 「うん、わかってるよ」  慌てて自身の発言を弁護するトパズにヒスイは微笑み、それから自分を見て笑顔を見せてくれる一番下の義妹を見つめた。 「僕がちょっと変わったのは、ダイチのおかげだよ」 「またダイチか」
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