第四話~激突する刃~

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 今ではその強さを超える存在がいる。  護りたい者がいる。 「もっと速く……もっと鋭くなるんだ……!」  窓から差し込む陽光が剣身で反射し、レイピアがキラリと光る。ただの偶然に違いないが、それを彼女の愛剣が主の言葉に頷いてくれたのだと解釈し鞘に納める。  輸血器やその他の小物を小さな革袋に詰め、剣帯を腰に巻き付ける。馬はメノウの父が育てている一頭を借りる予定だ。まだ話はしていないが否とは言うまい。元々隣町へ行きたい人がいれば率先して貸してくれるような人物だ。 「そういえば、ダイチはどうやってあんな短時間で隣町までの道のりを行き来したのかしら」  結局聞きそびれていた。今更な気もするがやはり気にはなる。  だが既にトパズ以外の誰かが聞いているのではないだろうか。少なくともマリン辺りは聞いているだろう。あの少女のことだ、色々と方法を考えた末にダイチに答え合わせをしていそうだ。トパズには想像がつかないことを思いつき、そしてその裏付けをするためにダイチに聞いている。そんな光景が思い浮かんだ。  弁当を受け取る時に尋ねたが、んーっと少し考えた後、 「内緒です♪」  と言われた。ああも可愛らしく言われては追及のしようがない。義兄と義妹に見送られて家を出、ダイチの武器はあの可愛らしさも含まれると認識を改めながらメノウの家へと向かう。 「あ、トパズ!」  いつも通り村の皆に挨拶をしながら剣を腰に提げ袋を担いで歩いていると、正面からやって来た少女が手を振りながら駆け寄って来た。  茶色と白色の二色が縦縞模様を作る、不思議な髪の色をしている少女。腰まである長い綺麗な髪を頭頂部付近で結び、左右の耳の後ろそれぞれに三つ編みを垂らしている。走りながら二本の三つ編みがピョコピョコと跳ね面白い動きをしている。腰に提げた直剣と盾をガチャガチャ鳴らせ、目の前までやって来た。 「メノウって見てて飽きないわね」 「え?」  茶色い目をパチパチと瞬かせ不思議そうにする少女、メノウに何でもないわ、とだけ答える。 「今日ってトパズはお休みだったよね? あたしの勘違いかな?」  腰のレイピアを見つめながら尋ねるメノウに首を振る。
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