第四話~激突する刃~

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「ここ、相席いいかしら?」  頭上から声が降って来た。視線を戻して上を見ると、女性が一人微笑んでいた。  綺麗な人。  すぐに浮かんだ感想がそれだった。  左側頭部で括られた、若葉のように鮮やかで艶やかな長い緑髪。宝石のように輝く緑色の双眼。緩やかな曲線を描く細く白い首から跳ね上がるように突き出た大きな胸元。そこから再び腰でくびれ、同性のトパズですら唖然とするほどにスタイルがいい。しかもそのスタイルを強調するかのように体に張りつくような薄い衣服を身に纏っている。長身の肌に密着する、見たことがない奇妙な黒いそれは二の腕の途中から肉付きのいい太腿までをしっかりと覆いつくし、窓辺から差し込む陽光をわずかに反射させ、それがまた彼女の淫靡なまでな美しさを助長している。 「お嬢さーん?」  再び声をかけられてハッとする。この時になってようやく彼女が背中に長いものを背負い、さらに背後に二人の少女を従えていることに気付いた。 「え、ええ。どうぞ」 「ありがと♪」  自然にウインクをして見せ緑髪の女性は壁に背中の長物を立て掛け、トパズの正面に座った。彼女の左右に背後に控えていた二人も座る。前面にいた緑髪の女性にばかり目が行ってばかりでようやく二人を観察する。  左手、壁と逆側に座った少女は随分と小柄だった。藍色のショートヘアーと同色の瞳は彼女の氷の冷たさすら感じさせる表情を強調しており、その瞳を向けられたトパズは思わず身を引きそうになる。どこまでも深く、引きずり込ませれてしまいそうな錯覚を覚える眼(まなこ)だ。  咄嗟に視線を逸らし彼女の首から下を観察する。緑髪の女性と同様の黒い衣服をで身を包んでいる。身長で言えばダイチほどだろうか。凹凸の控えめなその体をより平坦にしているようにも思える。長物を壁に立て掛けた女性とは違いこの子は二つの小さな丸い盾を腰の左右に一つずつ提げている。決して軽くはないだろうに肌身離さずの精神のようだ。  次にもう一人を見ようとし、 「っ」  壁側に座った少女と目が合い思わず体が反応する。狼のように鋭い目がトパズを一切の遠慮なしに睨みつけていたからである。
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