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そんなトパズの若干引き気味の視線を勘違いしたのか、コハクがトパズに食ってかかる。
「そんな顔したってお姉様はやんないからね!」
「誰が欲しいって言ったのよ」
「お姉様を要らないだと!」
「ああもうどう返事したら正解だったのよ!」
どうにもコハクはトパズが気に入らないらしい。
「お姉様、こんな女と同席なんかしないで別の席に行きましょう!」
「そうは言ってもねー。他の席は三人で座れる場所なんてないし」
「じゃ、じゃあ他の店に!」
「もう注文しちゃったでしょ」
「うぅ……」
まだ諦めきれないのか悔しそうに唸り、それから名案が思い浮かんだのか表情がパッと明るくなる。
「そうだ、この女がどっか行けばいいんだ! そういうわけで女、おまえどっか行け」
「はあっ!?」
苛立ちながらも、一応は場を弁えて静かにしていたつもりだったがここまで無遠慮に、そして無礼に言われては言われるがままにしておけない。椅子を押しのけ立ち上がる。
「言わせておけば、あんたさっきから偉そうに何様のつもり? ここに座っていて、場所を譲ってあげたのはわたしよ。どこかへ行くならあんた達がどこかへ行きなさい!」
「なんだと女! お姉様に無駄に歩かせようってのか!」
コハクが腰に帯びた弓に手を伸ばす。
「あんたがそういう態度をとるならそれも辞さないわよ」
ここで引くわけにはいかない。店主には後で謝るとして、トパズも腰の愛剣に手を伸ばし――、
「はいはーい、ふたりともそーこーまーでー♪」
両社の間に割って入るようにエメラがテーブルの上に体を突っ伏し大きく伸びる。長身なだけあって腕も長く、彼女の指先がトパズの腹部に触れた。
「ひゃっ!」
「ちぇーっ、あわよくばその可愛らしい胸をつつこうと思ったのに♪」
「かか、可愛らしいってなんですか可愛らしいって!」
「まあまあ。ほら、コハクも謝って? この可愛い子は何も間違っていないんだから」
「う……悪かった」
彼女の言うことには逆らえないらしく、視線をそっぽに向け、嫌そうな顔で言葉だけの謝罪をしてくる。より一層腹立たしいが、姉に免じて許すことにした。小さくため息を吐き軽く頷く。
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