第四話~激突する刃~

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「嵐に乗じて十数人の盗賊がこの町を襲って来たんです! ここは王都からも要請が来るようないい材木を取り扱っておりますから。盗賊達はこの診療所を占拠し村にある資源を根こそぎ持っていこうとしていたのです。町の兵達はわべっ」  今度は喋っていたスタッフが押しのけられた。珍しいことに女性のスタッフだ。彼女は頬を紅潮させ、今にも蕩けそうな表情で語りだした。 「町を護っていた皆は町人を人質に取られたことでどうすることもできなくされていました。そんな時、暗い雨の中を風のように疾走し影のように静かに現れた漆黒の騎士様……ああ、ダイチ様という素敵なお名前がございましたね。盗賊達をわずかな時間で殲滅なされたのです。年端もいかぬ小さなお体で大きな女性を相手にし、しかも全員を無傷で気絶させ無力化させたあのお方のお力……憧れますわ」  間違いない、この女性もさっきの三人の同類だ。  それは間違いではなかったが、認識が足りなかった。少し視線を動かして、足りていなかった状況認識が埋まる。この場にいるほぼすべての人間がダイチに、自分達を救ってくれた小さな剣士に心を奪われ慕っている。男女問わず、老人以外のすべての人間が憧れの人を思い浮かべる恋する者へと変貌しているのだ。 (ダイチ、あんたここで何をしでかしたのよ……)  村で義兄の世話をし家事をしているであろう、剣士でありながら主夫的作業もこなすブラックハイスペック少女を思いトパズは頭を抱えた。  * * * 「よし、それじゃあ休憩だ」  ルビアの号令で、シオンの剣の少女達は力なくその場に座り込む。ルビアも腰を下ろし、地面の上で大きく寝そべった。陽の傾きからして三時頃か。暫くしたらトパズも帰ってくるかもしれない。 「どうですの、ルビア? 体の調子は」 「ん?」  太陽が眩しくて目を細めていたルビアの視界から光源を隠すように上から覗き込んで来た女性を見る。 「サフィ」  隣にサフィが座り、ルビアも下半身を振り上げ、勢いよく振り下ろして上体を起こす。 「体力はまだまだだな。クレイモアを持ち上げるだけで腕がだるい。熱を出してたんだから当然といえば当然だが」
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