第四話~激突する刃~

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「そうは言っても、今日の様子から見てシオン最強は変わりませんわね」  おかしそうにクスクスと笑うサフィを見てルビアは肩を竦めた。 「トップツー、スリーのあの二人が不在だしな。今のアタシじゃ少なくともダイチには敵わない」 「ですわね」 「……わかってても他の誰かに言われるとイラッとするな」  顔を顰めるルビアにサフィが微笑む。 「今更遠慮をする必要などありませんもの」  軽い舌打ちをして再び地面に倒れこむ。わかってはいたことだが想像以上に体力の衰えが著しい。基礎体力が高いために皆が苦しいほどのハードなメニューをこなせてはいるが、以前の感覚通りにやろうとして体が追いつかないもどかしさがある。本来の力が発揮できないというのはなかなかに恐ろしい。  今この村での主戦力はルビアだ。サフィやペリドット達も十分に強いが、突出している三人の内二人が戦える状況にはない。まずありえないことだがこの村に何らかの危機が訪れた場合、率先して戦うべきは兵長であるルビア。  十日前に遭遇したあの白く大きな獣。あれがもしこの村に襲って来たらただでは済まないはずだ。結局ダイチが二人をどうやって村まで連れ帰ったのかも、あの獣をどう撃退したのかも聞けずじまいだったが、あの体躯だ、生半な実力でどうこうなるとは思えない。あれは人間ではない。人間相手でしか訓練がしたことがないこの村の兵士では十全に実力は発揮できないだろう。たとえどこぞの人間が村を襲撃したとしても、訓練ではない戦いというものを知らない。  命を奪われるという恐怖に、死ぬではなく殺されるという恐れを知らない。  戦えるのは自分だけ。 (早く調子を戻さないとな)  万一に備えて。それが兵士だ。これでは何のために戦技大会にも出ずに村に残っているのかわかったものではない。 「はーい♪ おじゃましまーす♪」  いきなりそんな声が聞こえた。随分軽やかな、楽しげな声だ。首を後ろに向けてシオンの剣の入り口に目を向ける。入り口付近で休憩していた少女達も同様に入り口に立つ人物達を呆けた顔で見ている。
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