第四話~激突する刃~

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 そして、一番の脅威はのほほんと笑っているあの偃月刀使い。相当の重さがあるはずのそれを抜く手も見せず背中から取り、隣の少女に斬りかかるマリンの鳩尾を突いた。速度で言えばトパズのそれにも劣るだろう。ただし重いだけでも武器となりうるそれをもろに食らえばまともに動けなくなっても不思議ではない。  偃月刀を背中に戻してよしよしと左右の少女の頭を撫でるその余裕が、ルビア達をわざと怒らせようとしているようにしか感じえなかった。  マリンに続いてアクアまで。手を出したのは確かにこちらが先だが、その理由は間違いなく先方にある。  兵長として、そして仲間として、この蛮行を赦すわけにはいかない。 「あたし達が探してるものは……って」  ルビアが、サフィが、ペリドットが剣を抜くのを見て緑髪の女性は肩を竦める。 「もう、みんなして気が短いんだからー♪」  そう言いつつ本人も嬉しそうにしながら偃月刀を取り出し、左右に構える少女達も己の装備を手に腰を落とす。  両者が臨戦態勢に入り、  先にルビアが飛び出した。  眉を顰め素早く矢を射る少女の動きはやはり早い。だが体力が衰えていても対応しきれないほどではない。まだ距離がある分楽に対処できる。迫る矢をわずかに身を逸らすことで速度を落とさず疾走する。大剣を持ちながら疾走するなど、あまりできることではない。驚きに目を見開く弓使いを警戒しつつ、後ろから二人も続いていることを足音で確認しながら矢をもう一本躱し、敵の目前まで到達した。 「はあっ!」  掛け声とともに大剣を一閃、クレイモアが三人の胴を引き裂かんと真横に振るわれる。空気を断ち斬り迫る攻撃を盾持ちは左に、弓使いは右に、そして偃月刀使いは頭上に飛んで回避した。女性はそのまま門の上を蹴り飛ばしルビアの遥か後方へと降り立つ。弓の少女にはサフィ、盾の少女にはペリドットが迫っていく。  それならば、間違いなく一番強いこの女を相手取るのは兵長の役目。体を反転させ再び疾走、大きく飛び上がり上段から遠慮も加減も一切なしの本気の一撃を振り下ろした。 「へー、お嬢ちゃん強いね♪」
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