第四話~激突する刃~

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 善良な仲間を、家族を襲う愚かな者達を粛清しなければならない。  歯を食い縛りクレイモアを握りしめ、 「ルビアッ」  サフィの鋭い叱責で我に返る。視界がレッドからフルカラーへと反転した。  サフィは顔中に脂汗を浮かべ苦しそうにしながら左手でバスタードソードを拾い上げる。 「へー? コハク様とまだやろうっての?」 「残念、そうじゃないですわ……貴女方、三名同時にお相手して差し上げます」 「はあ? 馬鹿じゃないの? 今の今までコハク一人に手こずってんじゃん。それをさらに二人追加? 言っとくけどお姉様はコハクなんかと比べ物にならないくらい強いよ。そこのところわかってる?」 「ええ、わかっていますとも……勝とうだなんて、思っていませんもの」  ですが、とサフィは微笑みを浮かべる。 「我らが兵長を、ここから逃がす程度の働きはしてみせますわよ」 「サフィ、おまえ何考えてるんだ!」  敵を警戒しながらサフィに駆け寄るルビア。幸い三人が三人手を出す気はないらしく、おとなしく合流するのを見守っていた。  すぐ目の前まで来て彼女の肩の傷が想像よりずっと深いことを理解した。血がとめどなく溢れ出し、だらんと垂れた右腕の指先からポタポタと地面に落ちて行っている。早く処置をしなければ命に関わる。 「アタシを逃がすって何を考えてるんだ! その腕で何ができる!」 「そうですわね……正直、もう相当厳しいですわ。立っているのも辛いくらい」 「じゃあ――っ!」  必死の形相で喋ろうとするルビアの口を自身の口で塞いだ。  一瞬脳裏が真っ白になり、数秒ほど硬直していたがやがて何をされているのか気づき思わず本気で距離を開ける。柔らかい感触が唇に鮮明に残っていて、知らず知らずの内に顔に血が上って熱くなってきた。 「ルビアが黙らないので、口を塞がせていただきましたわ。両手は今使えませんですので」  怪我をして真っ赤になった右手と武器を握った左手を示し悪戯っぽく微笑む。そんな余裕もないくせに、今にも気絶しそうなくせに。リアクションに困っているルビアを待たずサフィは表情を整え口を開く。 「いいですか。具合のいいことに、向こうはわたくし達を甘く見ています。悔しいことではありますが、今はこの村を護るためにそれを利用するのです」
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