第四話~激突する刃~

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「利用って……」 「はい。ダイチちゃんを呼びに行くのです」 「ダイチをって……なんでだ? あいつはアタシにすら負けたんだぞ?」  険しい顔をして尋ねたのだが、サフィは優しく微笑んだ。 「わかっているのでしょう? あの子の強さ。殺されそうになっていながら、どうしてあの子相手では泣いて、この人達では泣かなかったのか」 「……」  ダイチから感じた殺意の恐怖。涙を流してしまうほどの研ぎ澄まされた心。  目の前の女の技術も力量も相当で、胆力もある。少なくとも今の体力が衰えた自分では勝てない。  だが、あるいはあの子ならば……人を見る目があるマリンすらも疑問視した、あの謎多き義妹ならば。 「わかった、サフィ」 「ありがとうルビア、わかってくれて――」  安堵の表情を浮かべるサフィの左腕を掴み、力を込める。彼女が新たな痛みに苦悶の表情を浮かべ、さらにわからないといった顔で動揺しきった顔を見せる。さらに力を込めると、握力がなくなったらしく握っていたバスタードソードがガランと落ちた。  直後、サフィを大きくぶん投げる。 「わわっ!」  大怪我をしていても流石と言ったところか、シオンの剣の入り口付近へ飛ばされた彼女は何とか両足で着地を果たした。衝撃が肩に来たのか苦悶の表情を浮かべているがこの際勘弁していただこう。 「アタシが納得したのは呼んでくること。だけど呼ぶのはサフィ、おまえだ。その怪我じゃ、ロクに戦えやしないだろう?」 「そういうあなたも、怪我が少ないとはいえ戦えるの? 実力差は見えてる気がするけど♪」 「確かにな。けど、ちょっとだけ壁になるくらいならできるぞ。おまえ達、シオン村の兵長をちょっと舐めすぎてないか」 「お姉様に圧倒的に負けてたくせに何を生意気な!」 「行け、サフィ! 早くあいつを、あいつらを呼んで来い!」  右の肩を狙って飛んで来る矢を寸前で躱し、偃月刀を握って笑っている女目掛けて走りながら叫ぶ。 「サフィの行動一つで未来が変わる! いいから行け!」
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