第四話~激突する刃~

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 やはり要はこの偃月刀使い。大上段から降り下ろし、女は不敵な笑みを浮かべてそれを真正面から受け止めた。深傷(ふかで)を負ったサフィはもう脅威になりえないと判断したらしく、他二人の意識が自分に向けられたことを認識しつつ跳びすさる。 「サフィっ」  もう一度呼ぶ。ルビアに言ったようにサフィもわかっているはずだ。今の自分では足止めすらできないことを。尤も、この三人が逃げる背中に斬りかかるかはわからないが、放置などできようはずもない。  サフィと入り口を背後にして三人に対して大剣を構える。ゆっくりと息を吐き、 「サフィにも言うぞ」  地面を踏みしめ、不敵に笑う。 「シオンの剣を預かる兵長を舐めるな」  獰猛に、強情に、凶悪に、そして愉快そうに歯を向きだして笑う。それはいつしかトパズとダイチが家の裏手で訓練をしている様を見た時のそれと同じだった。  強者と戦うことへの歓喜、渇望。  戦士としての血が滾る。  何より。  仲間を護るために、弱いところは見せられない。 「うちの馬鹿どもを連れて来いサフィ!」  敵に対して吼えるように叫ぶ。その声に込められた威圧感に押されたのか即座に歩き去る足音を耳にしながらルビアは少女達が偃月刀使いのそばに寄っていくのを見て鼻で笑う。 「待ってくれるとは優しいな」 「あたし達が負けるはずはないからね♪」 「そうかよ。まあ、確かにあんたは強い。それは認めてやる。だがっ」  もう一度駆け寄り今度は横に薙ぎ払う。胴を分断することを厭う様子を見せず全力で。この相手に遠慮や加減などしている余裕などない。  すると両者の間に盾を持った少女が割り込みバックラーを構えた。ルビアの半分の体重もなさそうな少女が受け止めるというのか。背後に控えた女はおかしそうにルビアを見物している。  目を細め、しかしルビアは手を止めず口を開く。 「あんたに恐怖を抱かない! アタシをビビらせたのは生涯でアタシの義妹だけなんでな!」  全力の薙ぎ払い。それを少女は小さな円形で頭上に弾き上げ斬撃を後ろの姉から逸らす。無防備になるルビアの脇目掛けてツインテールの少女が矢ではなく蹴りを放ってくるのを視界に入れ、合わせるように右足を持ち上げ足裏を向ける。そこへ少女の蹴りが吸い込まれ、勢いよく押されるがままに再び後ろへ。
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