第四話~激突する刃~

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 ズドムッ、と。衝撃が体を突き抜けた。腹を突き抜けた形無き力に肺の空気が押し出され、心臓が一時的に停止する。小さな体のどこにあるのかと疑わずいられない力で体が後ろに飛び、壁に叩きつけられた。意識を失いかけるも部下達の悲鳴を聞き、たたらを踏んで堪え、  同時に放たれた二本の矢がルビアの双肩を射貫く。 「あっがぁ……っ!」  情けない声を出しながら壁に張りつけられてしまった。運動神経が断たれたのか肩から先がまったく動かなくなり、だらりとぶら下がった手から大剣が落ちる。 「ルビア!」  仲間の誰かが叫んだが、ルビアにはそれがぼんやりとしか聞こえない。ルビアの大事な、そしてルビアを大事に思う少女達は必死に地面に落ちている自分の武器を取ろうとしているのだが、どうしても指が震え持ち上げられないでいた。  先の矢に弾かれた痺れのせいではない。恐怖で手が震えているのだ。シオン村で圧倒的強さを誇る兵長がまったく歯が立たない相手に。仲間を想うと同時に自身の命を護るため、本能が拒否をしている。戦いを、ルビアを救いに行くことを。 「勝負あり、かな♪ さーて兵長さん。シオンの剣の場所、教えてくれないかなー?」 「誰が、言う、か……」  声を出す度に肺が震え、その振動が肩に伝わり激痛となる。視界が白く光りまともに見えないが、頭の上にあの長い武器が添えられていることだけはなんとなくわかった。 「言わないと死んじゃうよ? 村のみんなも、貴女の部下さんも言わなかったら死んじゃうんだよ?」  そう言われても、そもそも知らないのだ。答えられるはずもない。  だが。 「……へっ」  まだ、笑えた。 「? どうしたの?」 「一つ、教えておいてやる……」  体が元気であれば、盛大に腹を抱えて笑っていたことだろう。  聞こえて来るのだ、足音が。 「お姉様、何か聞こえます。これは……馬?」 「え?」  嘶きが。蹄が地面を蹴る音が。 「アタシの、義妹達は……天才、だ」 「義妹?」  近づいてくる。敵にとって死神となりうる者達が。 「自慢の、義妹だ……」 「ルビアさん、それは過大評価というものですよ」  突然頭上から声がした。
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