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三人が、シオンの剣の少女達が、そしてゆっくりとルビアが視線を上に向けると。
長く綺麗な黒髪を風にたなびかせ、漆黒の瞳に不敵さを湛えて見下ろす小さな小さな女の子が、壁の上に立っていた。この世のすべてを敵に回そうとも怯える様子などとても想像がつかないほどに、不敵で、無敵で、そして身内のルビアですら見たことがない傲岸不遜な顔。
「ですが……そうですね、義姉や仲間にちょっかいを出されて黙っていられるほど、『わたし達』は甘くありません。ここは少しばかり、死神にでもなりましょうか」
「そうね」
今度は横合いから声がした。入り口へと視線を向けた女は嬉しそうに微笑む。
「あら、貴女は♪」
腰まで届く金色の川。強い意志を見せる、炎を湛えた黄金の眼(まなこ)。腰に提げた鞘から抜き放たれた細剣を握りしめ、感情を抑える気がないというように招かれざる客を睨みつける。
「まさかわたしの村でこんなことをしているとは思わなかったわ。エメラ、コハク、カイヤ」
「覚えててくれたのねー、嬉しいな♪」
あ、そう。トパズは短く言い捨てる。
「わたしはどうでもいい。名前も経歴も、関係ない。いらない過去は捨ててしまうに限るのよ。だからあんた達もいらない過去」
レイピアを三人に突きつけ、義姉の姿を見て唇を噛む。血がにじんでいることに気づくことなく叫んだ。
「あんた達はここで潰す!」
「いいじゃん。お姉様、この女はコハクがやってもいいですか?」
弓を持っていた茶髪の少女、コハクがトパズを嘲笑いながら敬愛する姉に尋ねる。
「いいけど、ちゃんとシオンの剣の場所を聞くの、忘れちゃだめだよ?」
「もちろんです!」
喜々として近づいてくるコハクを半眼で見つめ、それから奥で肩を矢で貫かれ壁に貼りつけられた義姉と、その壁の上にいる義妹を見る。
見たことがない顔をしている。笑ってはいるが、普段の優しい、可愛い感じがしない。
相当なまでにキレている。
普段ならば仲間達を攻撃し、義姉に大怪我を負わせた相手に怒りを覚え、我を忘れて跳びかかっていたことだろう。そうならずに冷静を保てているのは単に義妹がトパズの分まで怒ってくれているからだ。
「ダイチ、そっちの二人は任せても大丈夫?」
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