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だが、ルビアを含むシオンの剣をことごとく無力化した三人だ、油断はできない。油断も驕りも持たずにただ待つ。細かい足運びで走るその動きは速度は凄まじく、しかし素早い速度変換、方向転換に重点に置いた走り方だ。機動性を捨てずに速度を保つとは恐れ入る走力である。
「はっ！」
そしてトパズの領域に踏み込んだ瞬間、コハクの腹部目掛けてレイピアを突き出す。ダイチの時のように寸前で止めたりはしない、本気で相手に怪我を負わせて戦闘不能に追いやる。しかしコハクは弓で弾き切っ先を逸らした。
特別驚くことではない。先の足の運び方から武器の形体を鑑みれば、近接戦闘でも十分に戦えることは想像に難くないのだから。
コハクは体の左にレイピアを流し、身体を同じ方向に回転、回し蹴りの勢いをつけて左足を突き出した。顔面目掛けて迫る靴裏をしかしトパズはかがんで躱し、一本立ちになった右足へ伸ばしたレイピアを引きもどしながら斬撃を狙う。即座に反応したコハクが小さく跳躍し足裏を掠めるようにしつつ回避し、今度はその跳んだ右足でトパズの顔へ横から急襲する。金属板を付けた足だ、破壊力はただのそれより高い。上体をわずかに反らし鼻先を通り抜ける足を見送り、今度は体を前に出す勢いを乗せて左下から斬り上げる。空中にいるコハクは回避は不可能。しかし弓で斬撃を受け止め、設置していないにも拘らず身を捻り、回転蹴りを放った。
「っとと」
咄嗟に後ろへ跳び距離を取る。素早く腰の矢筒から抜き出した矢を放ちながら着地をするコハク。矢を抜き、番え、放つまでの時間が極端に短い。無駄のない動きが一秒足らずで速射を可能にしている。
本能的に頭を横に振ると、頬を掠めた矢がトパズの顔に一筋の傷をつける。
「速いわね」
「そっちこそ、思ったよりかは動けるな」
血が流れる感触を覚えながら未だ腹立たしい笑みを消さないコハクを睨む。
「さっきから執拗にわたしの顔を狙っているような気がするのは気のせいかしら？」
「気のせいじゃないの？」
しれっと言っているが間違いなく狙っている。たしかに急所の一つである頭を狙うのは戦う上でありがちな戦法だが……、
（あのエメラって女が絡んでそうよね）
今度はトパズから前へと出る。
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