第五話~決心する姉~

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 ぼんやりとしていて現状をイマイチ把握できていないエメラのために簡潔に説明すると、全部を思い出したのか目を見開いてコハクを見、それから慌てて周囲を見る。すぐそばで倒れているカイヤに気づき首元に手を添え、ただ寝ているだけだと判断するとようやく落ち着いた。 「ここは牢です。コハク達、負けて捕まっちゃいました」 「そっか……うん、でもあの子には勝てなかったかなー」  諦めと恐怖を入り混じらせつつぼやく姉。こんなにも弱気な姉を見たのは初めてだった。しかし不思議と驚くことはない。姉の言うあの子というのがあの黒い少女、ダイチを示しているのだと考えると、それだけで納得してしまう。 「あ、でももちろん二人には危害を加えさせないからね? お姉ちゃんがなんとしても、二人を助けてみせるから」  助ける対象に自分自身を含んでいないことにコハクは内心苦笑する。考えることはやはり同じか、と。 「コハク?」  突然抱き着いてきた妹を優しく抱きしめながらも疑問の声が出る。 「実は、お姉様とカイヤが寝ている間に、コハクが話をしてきました」 「話……?」  眉を顰める姉を安心させるために抱き着いたままコハクは首を横に振る。 「悪い話ではない、と思います。三人で決めるように言われました」 「どんな話なの?」 「コハク達がこの村にしようとしたことを考えると無罪にはできないし、この村に来る前にやって来たことを考えると野放しにはできない、だそうです。これはコハクのせいだけど、二人に怪我をさせてしまいましたし」 「コハクのせいじゃないわ。でも、悪いことをしてきたのは本当ね……」  そこで、提案されたことというと。 「この村で、臨時訓練士をやらないか、だそうです」 「……え?」 「もちろん、やる気がないのであればかえって迷惑だとは言われました。兵長にもまだ上申していないから、まだ確定しているわけではないそうですが」 「ちょ、ちょっと待って。つまり、あたし達がここで働くってこと?」  さしものエメラでも状況が掴めないらしく、慌てているお姉様を見てコハクはクスクスと笑ってしまう。寝起きとは違う幼い態度に笑みがこぼれてしまうのだ。だがそれも仕方がない。実際話をして、その理由を聞いたコハクですら彼女達の考えを疑ってしまったのだから。
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