第五話~決心する姉~

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「お、お姉様?」  戸惑い二割、期待八割を表に出して赤面しつつも顔を後ろに逃がさず、逆にゆっくりとエメラの顔へ近づけるコハク。そんな妹が愛おしく、エメラは大事な家族の頬をそっと撫でる。熱を持った肌は柔らかく、ずっと撫でていたくなるような手触りだ。 「その話、決めたらどうするの?」 「お姉様とカイヤが目を覚ましたら、外で待機しているから呼ぶように、と……」  そう、と答え、エメラは妹の目から逃げるように顔を下げ、無防備にも急所を晒す彼女の首筋に舌を這わせる。短く声を上げる妹を抱きしめ、背中から地面に倒れて重なる様に体の上に載せる。 「じゃあ、カイヤが目を覚ますまで……ね♪」 「はい……」  潤んだ瞳で姉を見つめていたコハクはそっと目を閉じ、姉に身を委ねた。  一番下の姉妹が寝ている横で上二人が仲良くしている頃、流石に家で休んでいるわけにもいかず診療所のベッドで横になっているはずの兵長の下へマリンは向かっていた。サフィとヒスイも今は同じく診療所で安静にしているはずだ。実はダイチを呼んでくるようにルビアに送り出されたサフィはルビア達の家へ辿り着く前に道の上に倒れてしまっていた。不運にも村人達の誰とも遭遇することがなく、肩から血を流していた彼女は苦痛を伴いながらも地面を這ってでも進もうとしたその時、村へ帰ってきたトパズが彼女を見つけ、事情を聞いた細剣使いは近隣の家に人を呼びに行き、彼女を診療所へ連れて行くように頼んだ後で義妹を呼びに家までシロマを飛ばしてダイチを確保、その後白馬の全速力でシオンの剣まで連れて行ってもらったのだった。  人の言葉を理解し、偶然にも馬車に乗ろうとしている盗賊三人がシオン村を襲う算段を放していたことを聞いていたのが幸いだった。そうでなければトパズはそこまで早く村まで帰ってくることはできず、今でこそ命に別条はないそうだがサフィもルビアも大事に至っていたかもしれない。  シオンの剣での騒動が一段落して、ルビアも診療所へ搬送した後にこうなったらもう一緒にということでヒスイも一緒に治療に専念することになった、というのが事の顛末である。  兵長とその補佐的ポジションであるルビアとサフィが不在で、村一番の頭脳を持つマリンも気絶。そんな中でトパズは仲間達にテキパキと指示し襲撃者達を投獄、ダイチ以外の全員を医者に診させた。
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