第五話~決心する姉~

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 隣で寝ているサフィを見やり、 「あいつらの復讐そのものを止める義務も理由もないが、別に協力してやる義理もない。あいつらを教導役とするのは、実力的に不足はないとは思うが、これは罰だ。報酬を払う必要はないし、牢に入れておかないと危険も増す。訓練に参加させるということは武器も持たせるんだろ? とても最善策とは思えない」  そう言いつつも、マリンが得心なく自分に進言をしてくるはずがないと知っている。ダイチが出した案に納得し賛同できたからこそこうして言ってきているはずだ。  だからこそ、その考えをしっかりと聞いて決断をするのがシオンの剣を預かる兵長の務め。 「これから先のことを考えると必要。この方策による目的は二つ。一つは貴重な聖剣使いを減らさないため」 「減らさない?」 「聖剣なんて大仰な名前で呼ばれてるけど、要は頑丈で切れ味のいい武器。でも、強い戦士がその聖剣を使いこなせるとは限らない。ダイチは強いけど、偃月刀なんて重い武器は扱えない。魔剣を壊すには、聖剣を使いこなせる達人が必要不可欠。エメラは間違いなく強い人間。でも、コハクを助けた時に魔剣を壊さなかった。やっと見つけたにも関わらず。何故?」 「壊せなかった……?」  怪訝そうな顔で言うルビアにマリンは首肯する。 「でも、聖剣でも魔剣を斬ることができなかったわけじゃない。それなら今でも聖剣を求めていることと矛盾する。剣の心得のない人間に、偃月刀の聖剣を持ったエメラが敵わなかったから」 「直接手を会わせたから言うが、あの緑色は生半可な奴じゃ軽くあしらわれるだけだぞ」 「鎧を着ていた人間は死んでいた。そして剣を掴んだ男に鎧が移り、その村人を斬っている。ただの剣だと考えるのは拙い。呪いの類だと仮定した方がいい」 「……」 「鎧を着た後の男に自我がないことは明白。そしてここからが重要。死人と、武芸の心得のない人間。その両者が恐ろしい剣の達人だとすると、答えは一つ」 「剣そのものに、あるいは鎧に、剣を操る力がある……」 「そう。信じがたいけど、それが一番納得できる。人間を取り込み、無差別に殺戮を繰り返す魔剣。そしてそんな危険なものを処理することができる聖剣とその使い手。ルビアは魔剣が野放しにされていても構わない?」
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