第五話~決心する姉~

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「まさかとは思うが……うちのチビっ子が同じ屋根の下にいるから何もできない、なんて答えを持ち出してくるわけじゃないよな」 「まさかも何も、その通り。わたしも聞いた時は絶句したし、呆れもしたけど……」 「否定できないのが怖いよな」  エメラとカイヤを一人で倒したことはトパズから聞いている。それも、トパズの戦いに横槍を入れながら。それほどの実力差を見せつけられれば変な気を起こすことはないかもしれない。そもそもとして三人の身の安全が保証されているのは村の人間のお陰であり、裏切れば姉妹に危険が及ぶようなことを好んでするとも思えないが。 「あと、ダイチが村の聖剣を所持しているから、目的の物がある建物にいさせた方が不用意に活動範囲を広げずに済むって理由もあるけど」  なるほどと頷きかけたルビアは一秒停止し、 「ダイチが、なんだって?」 「三人が探していたシオンの剣。村に伝わる聖剣はダイチが選んだあの錆びだらけの打刀。あんな曲者武器を扱える強者も、ダイチの他にいないと思うけど」  もはや間抜けに口を開く他ないルビアを一瞥してからマリンは聖剣でもなく兵長でもない、馴染んだシオンの剣がある方向へ目を向ける。  直接ダイチからあの錆びだらけの打刀が聖剣だと聞いたわけではないが、コハクから話を聞く際に口にした意味をわかっていた。  偶然村へやって来た少女が凄まじい剣の使い手で、その彼女が選んだものが村に伝わる聖剣。そしてそこへやって来た、流れの聖剣使い。 (本当にただの偶然? それとも、戦神様のお導き?)  もしこれが戦神ブラックダイヤの導きならばきっと意味がある。聖剣使いの存在意義が魔剣の破壊であるとするならば、この村の兵士達の役目は彼女達の補佐。王城の騎士にすらなれるであろう実力の持ち主であるルビアがシオン村に居続けたのは間違いなく彼女の意志だが、あるいはそれすらも、その運命すらも定められていたというのか。 (……考えすぎかな)  頭を横に振り、ルビアに視線を戻す。 「それで、兵長の判断は?」  しかしルビアは何かを考えているようでマリンの呼び掛けに気づかなかった。 「じゃあ、もしかしたらあの大剣は……」 「ルビア?」
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