第五話~決心する姉~

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「お嬢ちゃんも混ざるー?」  長女のその言葉に色めき立つ下二人。だがマリンはそんないきり立つ二人を無視して長女を正面から見返し尋ねた。 「コハクから話は聞いてる?」 「聞いてるわよー♪ それよりもー、一緒に遊ばない?」 「答えは?」  取り付く島もない。暫く少女を眺めていたのだが、氷のように冷やか……というよりもゴミでも見るような冷たい目に観念し、ため息を吐く。 「そっちの提案に賛成。というより、他に道はないしねー」 「わかった。先に言っておくけど、あなた達が泊まる家は、今外で待機しているダイチの家。だから何かしようとしても無駄だとわかっておいて」 「ダイチ……?」  聞き覚えのある名にエメラは記憶を辿る。横で同じように首を傾げているカイヤにもわからないようだ。しかしコハクは一人だけその名の主を理解しているのか目を丸くし、それから姉と妹に説明した。 「お姉様とカイヤを倒した、あの黒髪の子です」 「あ……」 「あー、あの子ね。なるほど、確かに抑止力としては最適、というかそれ以外じゃあたし達を止めるのは難しいしねー」  苦笑いするエメラの声を聴きながらマリンは鍵を開けて告げる。 「そのダイチの言葉だけど、シオンの剣の兵長、ルビアはあなたより強いって。細かいことは聞いてないけど、わたしもそう思ってる。詳しく知りたいなら外で待ってるダイチに聞いて」  三人の格好がしっかりと整えられたことを確認して先に外へ出る。外で待っていたダイチは声が止んで落ち着きを取り戻したのか、目が若干腫れてはいるものの頬の赤みは引き、表情もしっかりしていた。  マリンの後から出てきた三人が何の拘束もされていない様子を見て結果を知ったらしく、嬉しそうに微笑んでいる。きっとこの少女のことだ、義姉を怪我させられたにも拘らずこの三人にとって幸せでいてほしいのだろう。どこまで甘いのだろうか、この子は。  しかしその反面、その甘い少女が不吉な笑みを浮かべてエメラとカイヤを震撼させたことをマリンは知らない。 「それじゃあダイチ。この三人を任せても大丈夫?」 「はい。マリンさんも万全ってわけじゃないんですから、無理せずゆっくりしててくださいね?」
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