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「ああ、エメラさんやコハクさん、カイヤさんに武器を返したら危険じゃないかってことですか? それとも、エメラさんの偃月刀とわたしの打刀、聖剣を三人と同じ場所に保管しておくことがです?」
隠すべきではないのかと思うことをペラペラと喋る少女にエメラは二の句が継げない。しかし小さな女の子は大したことではなさそうに言った。
「みなさんとは、心から打ち解けて仲良くしたいですから。それに」
目を細めた。まただ。また、見た目に似合わぬ不敵な笑みを見せている。
「わたしがあなた達に逃げられるようなことをすると思います?」
「っ!」
背筋を冷たいものが駆け下りる。あの戦いを思い出して戦慄しないはずがない。
少女は再び明るい笑みを浮かべ、前に向き直る。
考えを改めよう。この少女を奇襲しようなどと考えないほうがいい。例え寝ていても、夜襲が成功する自信が微塵も抱けない。
実はエメラが下した決定は、エメラが所持する聖剣の回収とこの村の聖剣を手に入れて逃げ出すというものだった。彼女の目論見はどんどんとやりやすい方向へ流れている。もうすぐすれば間違いなく最低限持ち去らなければならない品二つがある場所へ辿り着く。可能ならば馬も回収したいが、最悪、偃月刀と、コハク曰く錆だらけになっているらしい打刀の聖剣を奪ってこの村から逃げられればいい。
歩む先に見えてきた三階建てとシオン村一番の規模の建物が彼女達の家で、馬を預かっているアルナなる人物の家がある方向を指で示しながら教えてくれたりと、色々と喋りながらシオン村について話をしている。
「ねえ、お嬢さん」
「ダイチでいいですよ。他のお二人もそう呼んでください」
無邪気な声で返されエメラは頷く。
「じゃあ、ダイチちゃん。あたし達、同じ部屋で寝泊まりさせてもらってもいいかしら? これまでの旅をしている間、いっつも同じ寝床で夜を過ごしていたの。別々になったらあたし寝られそうにないわー♪」
「コハクも同じ意見だ」
「ぼくも」
「んー、というよりも最初からそのつもりでした。先に聞いておくべきだったけど、でもお互いに望みが一致したから良しとしましょう」
あははと軽く笑うダイチ。そこでエメラは内心拳を握る。これでこの村を逃走するのがより容易くなった。
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