エピローグ

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「訓練の時間で、一時間、わたしに挑戦する権利をあげます。三人ががかりでわたしの手から刀を落とすことができたら聖剣を差し上げ、村から出て行くことを許可します」  いいですよね? と尋ねられたトパズが頷いたことも、他の誰もが聖剣を盗まれることを危惧する様子がないことも、彼女の勝利を疑わなかったからだろう。  そして、結果が今日のような逆転劇を演じることになっていた。 「今にして思えば、二週間あたし達を野放しにしてたのって、遊ばれてたんだろうなー」  風呂を上がり、疲れと汚れを綺麗に落としてベッドに寝転びながらエメラはぼやいた。最初の二週間の出来事をトパズにすら話していないのはきっとそういうことだ。 「確かに怖いですけど……でも、基本的には優しい子ですよね」  隣に倒れてきたコハクが言う。 「料理、すごくおいしい」  反対側に身を横たえたカイヤもダイチの料理を褒める。  そうねー、と答えながら二人をそっと抱きしめた。 「ここまでおいしいお食事は今までないわよねー。あたし達を追いかけ回す時はある意味これまで生きてきた中で一番最悪の存在に見えるけど」 「ですね……」 「ん……」  返事が力ない。こっそり左右を見ると、抱きしめられた腕の中で抱きしめ返し、瞼を閉じて静かに寝息を立て始めている。訓練の指導という名の訓練参加に加え、ダイチに追い回される一時間を過ごし、おいしい食事と風呂の後の柔らかなベッド。一日の疲れが出て寝入ってしまうのも仕方がないことだ。かく言うエメラも睡魔が襲ってきている。  だからだろうか。眠りに落ちる前にこんなことを考えてしまったのは。 (あの子がいたら……魔剣を砕くことも、可能かしら……)  そして、その翌日のことだった。 「戦技大会、ですか?」  医者からゴーサインをもらったルビアとサフィが各々の愛剣を持って、久しぶりに訓練姿で戻って来た二人の発言にダイチが首を傾げたのは。 「忘れたの? ダイチが家に来た翌日の朝に話したでしょ?」  トパズがおかしそうに笑いながらダイチに教える。 「あ、そういえば……。でも、もうあるんですか?」  その言葉に今度はサフィが頷き答える。
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