エピローグ

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「二年に一度開かれますわ。そしてこの村から行くと、馬で二週間はかかりますの。ですから、その前に戦技大会へ出場する人間を選定するのですよ」 「そうだ。というわけで」  ルビアが引き継ぎニヤリと笑う。サフィと同じくその体は以前に比べてやや頼りないものとなっているが、その顔に浮かべられた強靭さは幾分もすり減っていない。むしろ増強しているようにすら感じられた。 「今日から一か月。その間毎日完全武装で模擬戦を行い、その結果を基にこのシオン村から大会に出場する者を決める。もちろん最終的な結果が一番大きいけどな」  おー、とシオンの兵士達から歓声が上がる。 「最大人数が一つの町村で八名だ。枠いっぱいの人員を排出するかどうかはわからないが、みんな心して取り組んでくれよ?」  エメラ、コハク、カイヤが見守る中で少女達が元気よく返事をする。 「ルビアは、今回はどうするの?」  そう言ったのはトパズだった。その瞳が若干鋭く、視線が交錯すれば思わず身が竦んでしまいそうな睨みだった。無論ルビアはそれに臆するようなことはなく、気にした風もなく肩を竦めた。 「何がだ?」 「前回は実力を認められて許可をもらったのに行かなかったでしょ。今年はどうするの?」  ん、と短く声を漏らす。表情が若干沈んだことを悟られまいとしたのか空を見上げ、それからその場にいる全員が黙り込んで自分の言葉を待っていることに溜息を吐き、諦めを込めて告げた。 「……アタシはやめておくさ」 「どうして?」 「おいおい、今日はやけに突っかかってくるな」 「笑って誤魔化そうとしないで」 「……」 「今まで聞かなかったけど、今日という今日は聞かせてもらうわよ」  トパズの叱責にも似た声にダイチがおろおろしている。そんな彼女に気づいたペリドットがダイチを引き寄せ、首の後ろから体の前に両腕を通して後ろから抱きしめながら小さな声で話した。 「ルビアは前回も、村に残りたいって言ってたんだよ~。そのこと、誰よりも怒ってたのがトパズなんだ~。トパズはきっと~、ルビアが誰よりも強いことを証明してほしいんだろうね~」 「ルビアさんは、どうして今まで……?」 「それを今、トパズが言わせようとしてるね~」
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