第三話~繋がれる命~

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「そうじゃ……こればかりはどうしようもない。血縁者がいないヒスイさんでは、血の提供を受ければ死ぬかもしれん。アスター王国で試された結果、四人に一人しか成功しておらん。出血量もひどい今、提供者への負担も大きい。リスクが大きすぎるんじゃよ」 「それは知ってる。それを承知で頼みたいんだ。サフィに」 「わ、わたしに、ですの?」  戸惑いながら自信を指差すサフィ。それは当然だ。これまで一度も血液の提供などしたことがないサフィがヒスイに血を分けても拒否反応が出る可能性が高い。ヒスイの死が早まり、サフィも貧血になりかねない。そう分かっているはずなのにどうしてこんなお願いをするのかと誰でも思う。 「ヒスイさんを助けられる可能性を試したいと思うのはわかりますわ。ですが、どうしてわたしなんでしょう?」 「……わからない」 「え?」  のそりと体を起こして布団を握りしめる。 「わからないんだ。誰が教えてくれたのか……でも、誰かが言ったんだ! ヒスイを助けたかったら、サフィの力を借りなきゃいけないって! わけがわからないとは思う。信じてくれなんて言うのも無茶だってわかってる! でも、頼む!」 「ルビア……」  ポロポロと涙をこぼしながら頭を下げるルビアを見下ろしてサフィは困ってしまった。できることならばルビアのお願いを聞いてあげたい。他ならぬ親友の頼みなのだから。だが躊躇いが生まれている。自分の身が可愛いからでは決してない。そんなつまらない理由で尻込みをするくらいならいっそ愛剣で心臓を貫いた方がましだ。  理由は別にあった。それはヒスイのことだ。もしも自分が血を分け、その結果拒否反応が現れてサフィの血がヒスイの体を蝕み、食い殺してしまえば、その原因はサフィということになる。もちろん誰もサフィを責めることはないだろう。自分の身を顧みず助けようとしたと慰められ、褒められるに違いない。  周りからの評価は関係ない。ヒスイを殺したくないのだ。大事な人だから。 (でも……)  トパズに支えられて嗚咽を漏らす親友を見る。ルビアは頭が悪い。思っていることを伝えることも、考えていることを言葉にするのも苦手な子だ。しかし、親友だから共にヒスイを殺してしまうかもしれないという重荷を背負ってほしいと、そんな安易な理由で頼むような人間ではない。
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