第三話~繋がれる命~

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(何か、根拠があるんですわね。うまく言えない、曖昧だけど確かなものが)  口元に笑みを浮かべ、一つ頷く。 「わかりましたわ。このサフィ、命に代えてもヒスイさんをお助けいたします。先生、わたしがヒスイさんの血の提供者となりますわ」 「サフィ……!」  廊下で叫び声がしてサフィは少し後ろを振り返り、それからルビアに視線を戻して微笑んだ。 「その代わり。ヒスイさんが元気になったら、ヒスイさんの手料理を食べさせていただきますわよ?」 「ああ……ああ……!」 「サフィ、ありがとう!」  ルビアを抱きしめて一緒に泣くトパズの頭を撫で、医者に向き直る。 「先生」 「わかった。すぐにヒスイさんのところへ行こう。……と言いたいのじゃが」 「?」  晴れない表情の医者にサフィが怪訝そうにする。不安そうに涙目で見てくる義姉妹の視線から逃げるように顔を余所に向け、低い声で不吉な一言を告げた。 「ないんじゃよ」 「ないって……何がですか?」  嫌な予感が胸中を過ぎる。 「血液を分け与えるための道具が、じゃ。需要がなさ過ぎてこの村には置いてないんじゃよ。隣町まで行けば必要な器具を借りられるじゃろうが、歩いて丸三日かかる距離じゃ。今から馬を走らせても片道で三時間。六時間もかかれば、恐らくもう……手遅れじゃ」 「そんな……助けられると思ったのに……!」 「どうにかできないんですか!? ヒスイさんを助ける方法は、他にはないんですの!?」  医者は首を横に振った。  決まった。決まってしまった。ヒスイが死を免れ得ないことが。僅かな可能性にすらすがらせてもらえない非情な現実が部屋を押し潰さんとしてくる。室内の四人はどうしようもない現実と、それに抗えない自身の情けなさに歯噛みし、涙し、嗚咽し、項垂れる。  そこへ新しい声が参入した。 「ヒスイさんの猶予はどれくらい?」 「え……」  ルビアは部屋の入口へと目を向ける。そこにいたのは小さな仲間。冷静で鋭い思考をする頭脳を持った年下の剣士。双子の姉にやきもきさせられる苦労の絶えない少女。マリン。 「先生。ヒスイさんが血をもらわずに持ちこたえるとしたら、どれくらいですか」 「あ、ああ。そうじゃな、ヒスイさん次第じゃが、二時間から三時間といったところかのう」 「それなら、大丈夫」
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