第1話

味方

その後ろの方で、子供達へボールの蹴り方を指導しながら、グランドの整備をする沢田コーチ。

監督との挨拶を終え、私はその姿をボーっと見ていた。

「沢田コーチは指導熱心なのはいいけど、もう少し保護者との会話がないとね…。それに、子供達への当たりは強いし。沢田コーチが指導するなら辞めたいって子もいるんだよね。」

この少年団に誘ってくれた、ママ友の美咲さんがポツリとはいた。

「そうなんだ。でも、子供達は楽しそうに見えるけどね。」

何となく出た言葉だったが、コーチ批判した美咲さんへの嫌味になってしまった事に気付いたのは、この後の言葉を聞いてからだった。

「……ま。沢田コーチの味方をする保護者は今のところ、いないよ。」

ニコッと笑って、美咲さんは他のママ友のところへ移動した。